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名古屋地方裁判所 昭和63年(ワ)933号 判決

第一事件原告

一井溶三

第二事件原告

田所雅美

ほか一名

第一・第二事件被告

村上健太郎

ほか一名

主文

一  第一事件原告一井溶三の請求を棄却する。

二  第二事件被告村上健太郎、第二事件被告丸鉄運送株式会社は、各自、第二事件原告田所雅美、第二事件原告原陽一に対し、各金四三一万三四七六円及び内各金四〇一万三四七六円に対する昭和六二年七月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  第二事件原告田所雅美及び第二事件原告原陽一のその余の請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は、第一事件については第一事件原告一井溶三の負担とし、第二事件についてはこれを二分し、その一を第二事件原告田所雅美、第二事件原告原陽一の負担とし、その余を第二事件被告村上健太郎、第二事件被告丸鉄運送株式会社の負担とする。

五  この判決は、第二項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

(第一事件について)

一  請求の趣旨

1 第一事件被告(第二事件被告、以下、単に「被告」という。)らは、各自、第一事件原告一井溶三(以下、単に「原告一井」という。)に対し、金一〇〇〇万円及び昭和六二年七月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2 訴訟費用は被告らの負担とする。

3 仮執行宣言。

二  請求の趣旨に対する答弁

1 原告一井の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告一井の負担とする。

(第二事件について)

一  請求の趣旨

1 被告らは、各自、第二事件原告田所雅美(以下、単に「原告雅美」という。)、第二事件原告原陽一(以下、単に「原告陽一」という。)に対し、各金八三七万〇二一七円及び内各金七六七万〇二一七円に対する昭和六二年七月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2 訴訟費用は被告らの負担とする。

3 仮執行宣言。

二  請求の趣旨に対する答弁

1 原告雅美、同陽一の各請求をいずれも棄却する。

2 訴訟費用は原告雅美、同陽一の負担とする。

第二  当事者の主張

(第一事件について)

一  請求原因

1 事故の発生

(一) 日時 昭和六二年七月一〇日午後〇時七分頃

(二) 場所 名古屋市中区金山四丁目一番二五号先交差点

(三) 加害車 大型貨物自動車(泉一一き二九八三)

(四) 運転車 被告村上健太郎(以下「被告村上」という。)

(五) 被害者 訴外亡原幸子(以下「亡幸子」という。)

(六) 態様 被告村上が加害車を運転して、右交差点を東方から左折進行中、折から同交差点の南側横断歩道を青信号に従つて東から西へ横断歩行中の亡幸子に右自動車の左側面を接触させて同女を路上に転倒させたうえ、同自動車左後輪で同女を轢過し、同女を脳挫傷により即死させた。

2 責任原因

(一) 被告村上は、横断歩道を青信号に従つて横断して来る歩行者の動静に十分注意しなかつた過失があるから、民法七一一条により、原告一井の後記損害を賠償する責任がある。

(二) 被告丸鉄運送株式会社(以下「被告会社」という。)は、被告村上の使用者であるところ、本件事故は被告会社の業務の執行中に発生したものであり、また、被告会社は、加害車を保有し、自己のために運行の用に供していたものであるから、民法七一五条若しくは自賠法三条により、原告一井の後記損害を賠償する責任がある。

3 損害

原告は、昭和四九年七月亡幸子(昭和九年二月九日生)と知り合い、昭和五一年八月頃から内縁の夫婦として同女が本件事故により死亡するまで生活してきた。

亡幸子には戸籍上の夫である訴外原弘(以下「訴外弘」という。)がいるが、同女は訴外弘を相手方として二回にわたつて神戸家庭裁判所に離婚調停の申立をしたが、いずれも不調となつた。なお、右夫婦の間には、長男である原告陽一、長女である原告雅美の二人の子供がある。

このような事情であり、原告一井は、本件事故により内縁の妻である亡幸子を失い、甚大な精神的苦痛を受けたが、これを慰藉するには少なくとも一〇〇〇万円をもつてすべきである。

4 よつて、原告一井は、被告ら各自に対し、金一〇〇〇万円及びこれに対する本件事故発生の被告である昭和六二年七月一〇日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否及び主張

1 請求原因1の事実中、(一)ないし(五)は認め、(六)は亡幸子が加害車に轢過されて即死したことは認めるが、その余は否認する。

2 同2の事実中、(一)は否認し、(二)は、被告会社が被告村上の使用者で本件事故は被告会社の業務の執行中に発生したものであること、被告会社が加害車を保有し自己のために運行の用に供していたものであることは認めるが、その余は否認する。

3 同3の事実中、亡幸子が昭和九年二月九日生で、同女には戸籍上の夫である訴外弘がいること、この夫婦間には長男である原告陽一、長女である原告雅美の二人の子があることは認めるが、原告一井が亡幸子の本件事故死により甚大な精神的苦痛を受けたとの点は否認し、その余は知らない。

4 原告一井に対しては、被告会社から亡幸子の損害賠償内金として五〇万円、自賠責保険から亡幸子の葬儀費名目で五九万円が支払われているところ、原告一井は定職を持たずに職を転々とし、亡幸子を扶養していたわけではなく、亡幸子においても原告一井との関係を清算しようと考えていたもので、二人の関係は内縁関係には至らない単なる同居人程度のものであつたというべきであるから、原告一井には亡幸子の死亡につき慰藉料請求権は発生しない。また仮に原告一井に右請求権が発生するとしても、その主張の金額は不当である。

(第二事件について)

一  請求原因

1 事故の発生

第一事件の請求原因1記載のとおり。

2 責任原因

(一) 被告村上は、第一事件の請求原因2(一)記載の過失があるから、民法七〇九条により、原告雅美及び原告陽一の後記損害を賠償する責任がある。

(二) 被告会社は、加害車を保有し、自己のために運行の用に供していたものであるから、自賠法三条により、原告雅美及び原告陽一の後記損害を賠償する責任がある。

3 損害

(一) 亡幸子の逸失利益 一六九八万八七三七円

亡幸子は、本件事故当時満五三歳の女子であり、社団法人名古屋市交通局の協力会に勤務し、死亡前一年間の給与は一六九万一二四四円であつたが、昭和五二年頃から原告一井と同棲して家事にも従事していた。従つて、亡幸子の逸失利益は、右給与及び家事労働の対価を合算すると、五三歳の女子年齢別平均給与年額である二三三万一六〇〇円を下回ることはない。そこで、亡幸子の就労可能年数は一四年であるから、これに対応する新ホフマン係数は一〇・四〇九であり、生活費三〇パーセントを控除すると、その逸失利益は一六九八万八七三七円となる。

(二) 亡幸子の慰藉料 五〇〇万円

亡幸子の死亡に対する精神的苦痛を慰藉するためには五〇〇万円が相当である。

(三) 相続 各五四九万七一八四円

原告雅美及び原告陽一は、いずれも亡幸子の相続人であつて、同人から前記(一)及び(二)の損害賠償請求権を四分の一(五四九万七一八四円)宛相続した。

(四) 原告雅美及び原告陽一の固有の慰藉料 各七五〇万円

亡幸子には戸籍上の夫である訴外弘がいるが、訴外弘は、昭和四〇年頃から賭事に溺れ、妻子に生活費を渡さず、サラ金から借金し、亡幸子に対し暴力を振るつたりした。そして、昭和四八年頃、訴外弘の暴力が過激になつたことから、亡幸子は、訴外弘を逃れて別居状態になり、翌昭和四九年には訴外弘を相手に離婚調停の申立をしたが、訴外弘は金銭要求をするなどして調停に出頭しなくなつたため不調となり、以後亡幸子と訴外弘は音信すらなく夫婦としての実体は全くなかつた。

ところで、原告一井は、亡幸子が訴外弘との間で婚姻関係が継続していることを知りながら、亡幸子と同棲するようになつたものであり、その関係は内縁関係ではなく事実上の同棲関係にすぎず、現に亡幸子は原告一井との右関係を精算しようと考えていたものである。そして、原告一井は、ほとんど定職につかず、住所を転々とし、その生活も亡幸子に負うところが多く、現に、原告一井は、亡幸子の葬儀費にもこと欠き、これを原告雅美に出捐させたほどである。また、原告一井は、葬儀社に虚偽の領収書を発行させて自賠責保険から五九万円を受領したほか、被告会社から五〇万円を受領しているのであつて、かかる原告一井が亡幸子の死亡により精神的苦痛を被つたとは到底考えられない。

これに対し、原告雅美及び原告陽一は、亡幸子と長年にわたつて同居し、かつ、結婚して独立した後も亡幸子とは緊密な関係を維持し、亡幸子の精神的支えとなり、また亡幸子を親として慕つてきたもので、本件事故の態様に照らしても、母親である亡幸子を失つた精神的苦痛は甚大である。このような場合、原告雅美及び原告陽一の近親者固有の慰藉料としては各自七五〇万円が相当である。

(五) 葬儀費 各五〇万円

原告雅美及び原告陽一は亡幸子の葬儀費として各自五〇万円を支出した。

(六) 弁護士費用 各七〇万円

(七) 以上のとおり、原告雅美及び原告陽一は、被告らに対し、各自一四一九万七一八四円の損害賠償請求権を有する。

4 損害の填補

原告雅美及び原告陽一は、自賠責保険から各自五八二万六九六七円を受領したので、これを前記各損害額に填補すると、残損害額は各自八三七万〇二一七円となる。

5 結論

よつて、原告雅美及び原告陽一は、被告ら各自に対し、各金八三七万〇二一七円及び弁護士費用を除く各金七六七万〇二一七円に対する本件事故発生の日である昭和六二年七月一〇日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否及び主張

1 請求原因1の事実中、亡幸子が加害車に轢過されて即死したことは認めるが、その余は否認する。

2 同2の事実中、(一)は否認し、(二)は、被告会社が加害車を保有し自己のために運行の用に供していたものであることは認めるが、その余は否認する。

3 同3の事実中、(一)は亡幸子の年齢は認めるが、その余は否認し、(二)は否認し、(三)は原告雅美及び原告陽一がいずれも亡幸子の相続人であること及びその相続分が各四分の一であることは認めるが、その余は否認し、(四)は亡幸子には戸籍上の夫である訴外弘がいること、原告雅美及び原告陽一が右夫婦間の子であることは認めるが、その余は否認し、(五)ないし(七)は否認する。

4 同4の事実中、原告雅美及び原告陽一が自賠責保険から各自五八二万六九六七円を受領したことは認めるが、その余は否認する。

5 同5は争う。

6 亡幸子の損害については、原告一井及び原告雅美、同陽一が前記各金額を受領しているほか、訴外弘が自賠責保険から九四八万七七六七円を受領している。

7 亡幸子の死亡については、原告雅美及び原告陽一に対し、亡幸子の慰藉料分として各自六二万五〇〇〇円、右原告ら固有の慰藉料として各自二一六万六六六六・五円、訴外弘に対し、亡幸子の慰藉料分として一二五万円、訴外弘固有の慰藉料として二一六万六六六七円、以上合計九〇〇万円を支払済みである。従つて、遺族固有の慰藉料を認める場合にも、亡幸子一名につき全体としての慰藉料額を算定し、これより亡幸子本人の慰藉料額を控除した金額について検討されるべきである。

第三  証拠関係は本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおり。

理由

第一第一事件について

一  事故の発生

1  請求原因1の事実中、(一)ないし(五)は当事者間に争いがない。

2  同(六)は、亡幸子が加害車に轢過されて即死したことは当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲(イ)第一〇号証、第一二、第一三号証、第一五号証によれば、本件事故の発生状況は原告一井主張のとおりであつたことが認められる。

二  責任原因

1  前掲甲(イ)第一〇号証、第一二号証、第一五号証によれば、被告村上には本件事故の発生につき原告一井主張の過失があつたことが認められるので、同被告は、民法七一一条により、原告一井の後記損害を賠償する責任がある。

2  被告会社が被告村上の使用者で本件事故は被告会社の業務の執行中に発生したものであること、被告会社が加害車を保有し自己のために運行の用に供していたものであることは当事者間に争いがないから、被告会社は民法七一五条若しくは自賠法三条により、原告一井の後記損害を賠償する責任がある。

三  損害

請求原因3の事実中、亡幸子が昭和九年二月九日生で、同女には戸籍上の夫である訴外弘がいること、その夫婦間には長男である原告陽一、長女である原告雅美の二人の子があることは当事者間に争いがない。

そして、成立に争いのない甲(イ)第九号証、官署作成部分については成立に争いがなく、その余の部分については弁論の全趣旨により成立の認められる甲(イ)第二号証、弁論の全趣旨により成立の認められる甲(イ)第一七号証及び原告雅美本人尋問の結果によれば、訴外弘は賭事で借金を作つたり亡幸子に対し暴力を振るつたりなどしたので、亡幸子は昭和四八年頃訴外弘から逃れて別居状態となり、翌昭和四九年には訴外弘を相手に離婚調停の申立をしたが、訴外弘が金銭要求をするなどして調停に出頭しなくなつたため不調に終つたこと、原告一井は亡幸子が勤務していた会社へ出入りしていて亡幸子と知り合い、昭和五一年頃から同棲するようになり、以来、訴外弘と亡幸子とは事実上離婚同様の状態となつたこと、原告一井には定職がなく経済的には亡幸子に頼り勝ちであり、住居も定まらなかつたが、原告一井と亡幸子は一〇年間以上にわたつて同棲生活を続け、事実上の夫婦としての実体を持つた生活を営んでいたものであること、原告雅美及び原告陽一も亡幸子と原告一井のこのような関係を認め交際を持つていたこと、以上の事実が認められ、右認定を左右する証拠はない。

しかして、右認定の事実によれば、原告一井と亡幸子は内縁関係にあつたものであり、これが重婚的なものであつたとしても、原告一井は内縁の夫として亡幸子の死亡により、民法七一一条にいう配偶者に準じて、その精神的苦痛を償うべき慰藉料請求権を有するものと認めるのが相当である。

そこで、右慰藉料額を検討するに、前記認定の本件事故の態様、原告一井と亡幸子の同棲期間等に照らすと、原告一井が亡幸子の死亡により少なからず精神的苦痛を被つたことは認められるが、原告雅美本人尋問の結果及びこれにより成立の認められる甲(ロ)第七号証によれば、原告一井は名古屋市で亡幸子の密葬を取り行つたが、その費用は原告雅美において出捐したものであつて、原告一井が支出した金銭はないこと、しかるに原告一井は葬儀費用名目で自賠責保険から五九万円を受領したほか、被告会社から亡幸子の損害賠償内金として五〇万円の支払を受けていること(これらの金員の支払を受けたことについては、原告一井は明らかに争わないから自白したものとみなす。)、その他本件に現れた一切の事情を勘案すると、原告一井の慰藉料は右金員の支払によつて填補されていると認めるのが相当である。

四  結論

よつて、原告一井の請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

第二第二事件について

一  事故の発生

第一事件についての一記載と同様であり、本件事故の発生状況は原告雅美及び原告陽一主張のとおりである。

二  責任原因

被告村上には本件事故の発生につき原告雅美及び原告陽一主張の過失があつたこと、被告会社が加害車の運行供用者であることは第一事件についての二記載と同様であるから、被告村上は民法七〇九条により、被告会社は自賠法三条により、原告雅美及び原告陽一の後記損害を賠償する責任がある。

三  損害

1  亡幸子の逸失利益 一四五六万一七七四円

成立に争いのない甲(ロ)第五号証によれば、亡幸子は、本件事故当時満五三歳(当事者間に争いがない)の女子で、社団法人名古屋市交通局協力会に勤務し、死亡前一年間の給与は一六九万一二四四円であつたことが認められ、また、亡幸子が原告一井と同棲して家事にも従事していたと認められることは前記認定によつて明らかである。

従つて、亡幸子の逸失利益は、右給与及び家事労働の対価を合算すると、五三歳の女子年齢別平均給与年額である二三三万一六〇〇円を下回ることはないと認められる。そこで、亡幸子の就労可能年数は一四年であるから、これに対応する新ホフマン係数は一〇・四〇九であり、生活費四〇パーセントを控除すると、その逸失利益は一四五六万一七七四円となる。

2  亡幸子の慰藉料 五〇〇万円

前記認定の本件事故の態様、亡幸子の年齢その他本件に現れた一切の事情を斟酌すると、亡幸子の死亡に対する精神的苦痛を慰藉するためには五〇〇万円が相当である。

3  相続 各四八九万〇四四三円

原告雅美及び原告陽一がいずれも亡幸子の相続人であること及びその相続分が各四分の一であることは当事者間に争いがないので、亡幸子の前記1及び2の損害賠償請求権を四分の一(四八九万〇四四三円)宛相続したものである。

4  原告雅美及び原告陽一の固有の慰藉料

各四五〇万円

訴外弘と亡幸子との関係は前記認定のとおりであつたが、原告雅美本人尋問の結果によれば、原告雅美及び原告陽一と亡幸子との関係は精神的に緊密であり親子としての情誼を尽していたことが認められるので、右原告らに亡幸子の死亡に対する固有の慰藉料請求権を認めるのが相当であるが、その金額は被告ら主張のように亡幸子一名につき全体として算定された金額の範囲内で認めるのが相当であると解する。

しかして、本件の場合には、亡幸子一名につき全体としての慰藉金額は原告一井が実質慰藉料として受領している分を除き一八〇〇万円が相当であると認めるので、これから原告雅美及び原告陽一並びに訴外弘の受領額合計九〇〇万円を控除すると、残額は九〇〇万円となる。従つて、右原告ら固有の慰藉料額を各自四五〇万円と認める。

5  葬儀費 各四五万円

成立に争いのない乙第四、第五号証及び原告雅美本人尋問の結果によれば、原告雅美及び原告陽一は亡幸子の葬儀費として各自四五万円を支出したものと認められる。

6  損害の填補

原告雅美及び原告陽一が自賠責保険から各自五八二万六九六七円を受領したことは当事者間に争いがないので、これを右原告らの前記損害合計額である各自九八四万〇四四三円から控除すると、残損害額は各自四〇一万三四七六円となる。

7  弁護士費用 各三〇万円

本件事案の内容、訴訟の経過、認容額等に鑑みると、原告雅美及び原告陽一が本件事故と相当因果関係のある損害として賠償を求め得る弁護士費用は各自三〇万円とするのが相当である。

四  結論

よつて、原告雅美及び原告陽一の請求は、被告ら各自に対し、各金四三一万三四七六円及び弁護士費用を除く内各金四〇一万三四七六円に対する本件事故発生の日である昭和六二年七月一〇日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条を、仮執行の宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 寺本榮一)

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